現在、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により深刻な公衆衛生の危機が発生しています。新型コロナウイルス関連のニュースを見ていると、PCR検査、抗原検査、抗体検査などさまざまな検査の名前を耳にする機会があるのではないでしょうか。今回は、PCR検査、抗原検査、抗体検査それぞれの検査の違いや意味を詳しく解説いたします。
PCR検査とは?
PCR検査とはポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)の略で、ウイルスの遺伝子を増幅させて検出する方法です。鼻や咽頭を検査用綿棒で拭い、細胞を採取して検査を行います。発症から9日以内であれば唾液を採取しての検査も可能です。
PCR検査は新型コロナウイルス感染症の確定診断に用いられており、陽性判定の結果が出た場合は新型コロナウイルスに感染しているということになります。しかし検査結果が陰性でも、感染していないという証明にはなりません。感染者のうち陽性と判定されるのは7割程度です。ウイルス量が少ない時には見逃してしまうという限界もあります。
抗原検査とは?
抗原検査とはウイルスに感染した細胞が特異的に産生された抗原を検知して診断に導く検査のことを言います。PCR検査とともに、新型コロナウイルス感染症の確定診断に用いることができます。新型コロナウイルスの抗原検査をするキットは15~30分ほど素早く検出ができること、特別な検査機器を使わずに検査ができるというメリットがあります。但し、診断をつけるためには一定のウイルス量が必要となります。
抗体検査とは?
抗体検査とは新型コロナウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる検査です。抗体とはウイルスが体内に入ってきた時にウイルスを体内から除去しようと身体が作り出すタンパク質です。抗原検査と同じように、便利で検査速度が速いという利点があります。IgMは新型コロナウイルスに感染の初期段階(約7日間以内)で血液中に生成されます、IgGは感染後(感染して1週間後から上昇、数ヶ月又は数年の間持続)に生成されますので、抗体検査は感染の段階に関する情報を提供することが可能です。
抗体検査はこのような方にお勧めです。
- これまで特に自覚症状がなく、ずっと健康であったものの、過去に新型コロナウイルス感染症にかかっていたか心配な方。
- 少し前に風邪の症状があり健康状態に戻ったものの、それが新型コロナウイルス感染症だったか心配な方。
- 出勤するまたは登園登校する前に、自らが免疫を持っている状態か予め確認しておきたい方。
- 社員の方をオフィス勤務に復帰させて社内での集団感染を未然に防止したい経営者・管理者の方。
※現在、発熱や咳等の症状がある方には、PCRまたは抗原検査をお勧めしております。
3つの検査の違いは下の表をご覧ください。
PCR検査 | 抗原検査 | 抗体検査 | |
---|---|---|---|
何を調べる? | 今、感染しているかどうか | 感染したことがあるかどうか | |
何に注目する? | 新型コロナウイルスの遺伝子配列 | ウイルスによって産生した特有のたんばく質 | ウイルスを攻撃する体内の抗体 |
検体 | 鼻の奥の粘液、唾液(抗原検査キットは粘液のみ) | 血液 | |
検査実施場所 | 検体を検査機関に搬送して実施 | 検体採取場所、自宅で実施 | |
結果が出るまでの時間 | 4~6時間。1時間程度で測れる方法も出てきた | 15~30分程度 | 15~20分程度 |
精度 | 抗原検査より少ない量のウイルスを検出できる | 検出には、一定以上のウイルス量が必要 | ある程度の濃度に達した後抗体を検出できる |
総合判断 | ウイルス濃度はまだ低い場合、陰性でも、感染がないことを証明することはできません | 感染の段階に関する情報を提供できる |